2015年12月13日日曜日

用例収集 【可能補語の畳み掛け】 

韓寒の《青春》より、

衣食住行这四个字当中,衣服贵,医疗贵,住的贵,行的贵,唯独食还不算贵,这个就是无耻的地方。它让你行不起,病不起,住不起,玩不起,学不起,生不起,结不起,离不起,但唯独让你吃得起。它让你过不下去但又饿不死。

(訳)
衣・食・住・交通という4つうち、服は高い、医療も高い、住むのも高い、交通も高い、ただ食だけが高いとは言えない。これが最も恥知らずなところだ。(上海という都市は)どこに行こうにもお金がなくて行けないし、病気になっても医療費は払えないので病気にもなれない、住宅費が高くてまともな家に住めないし、遊ぶにもなにかとお金がかかるのでそれもできない、学ぼうにも学費が高すぎて学べない、子どもを生ませるためのお金もなくそれもできない、結婚費用も払えず結婚も出来ない、離婚するにも離婚費用が払えずそれも出来ない、でも、食べていけてる。(上海という都市は)なにをするにも八方塞がりだが、それでも飢え死にはしないように出来てるんだ。


これは韓寒という作家が、上海万博の年に嘉定区世博论坛というイベントで講演をした時に原稿です。その名も《城市,让生活更糟糕》(上海万博のスローガン,“城市,让生活更美好”へのカウンターオピニオン)。

行不起 (どこに行こうにもお金ばかりかかって行けない)
病不起 (病気になっても医療費は払えないので病気にもなれない)
住不起 (住もうにも住宅費が高くてまともな家に住めない)
玩不起 (遊ぶにもそんな余裕もない)
学不起 (学ぼうにも学費が高すぎて学べない)
生不起 (子どもを生ませるためのお金もなくそれもできない)
结不起 (結婚費用も払えず結婚も出来ない)
离不起 (離婚するにも離婚費用が払えずそれも出来ない)

と、結果補語の否定形を畳み掛けた後、でも、

吃得起(食べてはいけてる)

という、国はなにもやってくれないけど最終的な生存への必要としての食だけは低収入でもなんとかやっていけるようにしてるということについて皮肉っぽく表しています。やりきれなさに満ちた一文です。たしかに中国の食費は、安いところに行けば一食5元で行けますから。

それにしても、中国語って簡潔ですね。たった三文字でここまで表現できてしまいます。

動詞+得(不)+起[+名詞]
ある能力を持っている(持っていない)またはあることができる(できない)

結果補語の否定形でもっとも知られているのが“对不起”ですが、これは「あなたに向かって立っていられない(まともに顔向けできない)」ということで、逆に結果補語の可能形の“对得起”だと、「なにもやましいことも失礼なこともしていない」という意味になりますね。

“吃不起”は「(わたしの収入ではそれを食べるだけのお金がなくて)食べられない」で、お金がある場合は“吃得起”となります。
お腹いっぱいでこれ以上食べられない場合には、“吃不了”という言い方をします。

なので

動詞+得(不)+起[+名詞]
は、どこかせつない、本当はしたいけどできない、という含意を持っています。
韓寒の書き方はまるで The Yellow Monkeyの名曲「Four Seasons」を聴いてるかのようです。
だけど勇気が足りない 力が足りない 時間が足りない
お金が足りない 空気が足りない 命が足りない
だからまず僕は壊す 全部足りないから
まず僕は壊す
全部欲しいから
(Four Seasons)
そういえば、阿城という作家は、“玩笑说,中国文化只剩下了个“吃”。”と書いていました。

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