真夏の上海は、真昼に外に出るだけで大変だ。
暗くなってから、水を汲みに下に下りた。
「打水」とかいて、Dǎ shuǐと読み、意味は水汲み。
「打」Dǎ、という動詞は見事にいろんな意味で使える。
打つ、はもちろんのこと、ほかには「打飯」で、
容器だけもってって、その容器にご飯を入れてもらうという
用法もあったり。ま、それはそれとして。
水汲み機に、5角を入れて、オンを押すと、水が出てくる。
それを、空の4リットルペットボトルで受ける。
「水汲み機」と書いている、その虹色の安い光を、
水を汲んでいる最中に見る。
漢字が、虹色の小さな光を発しているのを見ていると、
なぜだか急に悲しくなった。
両手に水で満たされたボトルを持って、
アパートへ戻るとき、茶色のかわいい猫がいた。
大きい女の子が、しゃがんで、その猫をなでていた。
彼女は、「猫を見ましょう」といって、その猫のところに
かけて行った。そして大きな女の子と彼女は、
しゃがんで会話を始めた。
大きい女の子は唐突に「この猫持ち帰って飼えば?」と彼女に聞いた。
彼女は、実は一匹飼ってるの、ネット上に広告出して、
誰かに引き取ってもらうのがいいわ。私前に一回やったことがあるの。
と話していた。確かに過去にそういうことがあって、彼女が拾った猫を
ネット上で飼い主募集したら、浦東の金持ちの女の子が引き取ったのだった。
さらに、そのかわいい捨て猫のために、ウェルカムケーキまで用意して
みんなで供したの由。写真を送ってくれたんだった。
今、大きい女の子になでなでしてもらっているこの茶色の猫に、
そういう温暖な雰囲気に遭遇することはあるのだろうか。
オレンジ色の街頭の下で、しゃがんで猫を見て、
ジブンが「しゃがんで猫をみている」と実感していた。
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